『宇宙よりも遠い場所』の聖地巡礼

先日、シンガポールに行く機会があった。シンガポールと言えばマーライオンである。しかし、個人的には『宇宙よりも遠い場所』の聖地というイメージも強い。

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通称『よりもい』は、女子高生が南極に行くという斬新なテーマを1クールで見事に描き切った名作である。南極で命を落とした母親を追い、主人公が仲間を巻き込みながら南極を目指し成長していく姿は必見だ。

そんな主人公たちは、砕氷船『しらせ』がモデルのペンギン饅頭号に乗って昭和基地へ向かう。しらせは例年 11 月に東京を出港した後、オーストラリアのフリーマントルに寄港。そこで南極観測隊員を乗せ、昭和基地へと赴く。これに倣って主人公たちもフリーマントルからペンギン饅頭号に乗るわけだが、オーストラリアに行く際にシンガポールを経由しているのだ。せっかくシンガポールに行くなら、よりもいの聖地巡りをしておきたい。行きと帰りでトランジットの時間は 6 時間と 7 時間半しかなかったが、それでも最低限は見て回れるはずだ。

そんなわけで羽田空港からチャンギ空港へ飛ぶ。所要時間は約 6 時間で、途中で機内食が出た。

上手く撮れていなかった。帰りの機内食の写真をば。

食事が運ばれてきたときは「これだけで足りるか?」と思ったが、食べてみると意外にも満腹になった。機内では基本的に座っているだけなので、空腹感もあまり感じない。それを考えると、キマリたちに提供された機内食はなかなかの量だと思う。

チャンギ空港に到着。機外に出た瞬間に思わず顔が引きつった。おそろしく蒸し暑い風が身体の周りを吹き抜けていく。北海道の 10 ℃ 台前半の環境に適用していた体に 30 ℃ の熱風は攻撃力が高い。そして何よりも湿度が凄まじく、夏の東京の雨上がりのような気候だった。

入国審査は自動化されており、パスポートの読み取りと顔写真の撮影、指紋の記録を行う。近くに警備員が立っており、操作に手間取っている人に話しかけていた。僕も話しかけられたが、訛りが強すぎて英語だと認識できなかった。

チャンギ空港は中心地から少し離れているので、市内を観光するならタクシーや MRT(鉄道)で移動する必要がある。MRT を利用する場合、Changi Airport 駅から Tanah Merah 駅へ移動して下車し、向かいのホームから出る電車に乗り換える。そのまま Raffles Place 駅まで行けばマーライオン公園の近くに出られる。所要時間は 40 分ぐらいで料金は 2.5 シンガポールドル。安い!

Raffles Place 駅に着いた。ドアの前に立つとホームから蒸し暑い熱気が流れ込んでくる。冷房が効いた車内との気温差で風邪をひきそうだ。

地上に出ると巨大な高層ビル群に囲まれた。いかにも都会といった雰囲気。案内板が無かったので Google マップを頼りにマーライオン公園へと向かう。時刻は朝の 7 時で、ようやく日が昇ってきたところだった。

早速マーライオンの実績を解除した。朝早くなので人通りは落ち着いていたものの、観光客の姿はちらほらみかけた。それにしても、マーライオンは水を吹いているんじゃなかったっけ?

と思っていたら水を吹き始めた。

奥にはマリーナベイ・サンズがある。朝の陽光に照らされたホテルはどこか神聖な雰囲気を醸し出していた。何度見返してもとんでもない構造をしており、よくこんなの作ったなと思う。よりもいを見たときにも「なんだこの建物は」と思ったけれど、それを実際に見られたのはなかなか嬉しい。

そんなマリーナベイ・サンズの下にはショッピングモールのようなところがある。

キマリや報瀬がドリアンアイスを食べていた場所だ。

夜にはライトアップも行われる。ここを訪れたのは 20 時だったので大変盛況していた。

そして、マリーナベイ・サンズの奥にはガーデンズ・バイ・ザ・ベイと呼ばれる巨大な植物園がある。よりもいには登場しなかったが、ここも有名な観光スポットらしい。

かなり広い植物園で、とても全部は周りきれなった。

そしてとにかく夜景が凄かった。雲模様も相まり、その光景は圧巻の一言。

先ほどの夜景は、この木のような人工物『スーパーツリーグローブ』の上から眺めたもの。麓ではゆったりとした音楽と共に美しいライトアップが行われており、人々が地面に座り込んでその様子を眺めていた。祭りで花火を見る人々の姿にそっくりだった。ライトアップの時間はあらかじめ決まっているぽいので、事前に調べていくと良さそう。

植物園の内部に入ったりスーパーツリーグローブを登るためにはチケットの購入が必要だが、この麓の空間には無料で入れる。中心地のすぐ近くでこのような体験ができるのは良い環境だと思った。

最後はグルメである。

シンガポールのグルメはよくわからないが、自分はホーカーと呼ばれる屋台街に行った。ホーカーはフードコートのような場所で、様々な飲食店があちこちに立ち並び、所狭しと机や椅子が置かれた空間である。有名なのは Lau Pa Sat(ラオパサ)とマクスウェル・フードセンターらしく、特にキマリたちが終盤で食事をしていたのは後者だと思われる。

屋根や机の様子が一致。この付近を散策したのは朝 9 時前で、屋台は閑散としていた。それでも地元民と思われる人々が食事をしており、中華料理を食べていた。

Lau Pa Sat は夜の21時頃に訪れたので大変混雑していた。現金しか使えないと聞いていたが、いざ現金で代金を払おうとしたらカードしか使えないと言われる。帰国前にシンガポールドルを消費しておく必要があったので困っていたところ、見知らぬ現地の人がシンガポールドルを受け取る代わりにカードで代金を支払ってくれた。そしてお礼を言う前にどこかに消えてしまった。

Lau Pa Sat では 5 シンガポールドル前後で食べられる料理が多く、物価が高いシンガポールにおいては地元民にも人気のホーカーらしい。中には 20~30 シンガポールドルする一品料理もあるが、それでも良心的な値段設定だと思う。

そんなこんなをしているうちに時間はあっという間に過ぎ去り、帰国のためチャンギ空港へと戻ることになった。

自分はそれほど聖地巡りに熱心なわけではないので、アニメのカットに合わせた位置や角度を探したりはしなかった。それでも、主人公たちがどんな旅路を歩んでいたかを実際に体験できて楽しい時間を過ごせた。また、よりもいを見ていなければショッピングモール前でのライトアップやホーカー街の存在を知らずにシンガポールを後にしていたに違いない。またいつか観光に来られるといいと思う。