『ぼっち・ざ・ろっく!』のライブシーンを見て衝撃を受けた話

『ぼっち・ざ・ろっく!』の5話と8話、12話を見て、その圧巻のライブシーンにとんでもない衝撃を受けたので、その感想を少し書いておきたいなと。とはいえ、『ここが尊い』『あのシーンは震えた』みたいなことを書いてもまあ……という感じなので、あくまでメモ程度。スクショを貼るのは著作権がどうかするかもだが。。

ギターの描写

まず驚いたのがギターの描写。

低音弦がちゃんと太く描かれている!!

めちゃくちゃ動くシーンでも、ギターがアップのシーンでは低音弦が太くなっているカットがいくつか。これやばくないですか?主人公やヒロインがギターを弾くアニメは数多く存在するけれど、弦が描き分けられている作品はかなり珍しい。自分も弦楽器を弾く人間なので、こういう描写を見ると思わず口角が上がってしまう。

ちなみに、描き分けされていないカットもたくさんある。原画で弦の太さまで統一するのは難しいのかもしれない。でも、弦が光を反射している様子を描いているだけでもかなり変態なことをしていると思う。あと、全然関係ないけど右手のスピード感が凄い。思わずターボ歩美が脳裏に浮かんだ。

同じく弦の話で、『あのバンド』の前にぼっちちゃんが突然ギターをジャラーンと鳴らすシーンも良かった。

ストローク前は全ての弦が同じ太さで描かれている(少し離れるとギターの弦は全部同じに見えるよね)。一方、ストローク後には1-4弦が少し太く描かれている。弦が弾かれて振動している様子を再現している模様。5・6弦が太く描かれていない理由はよくわからないが、高音弦の方を強めに弾いたということなのかな?ほんのちょっとしたことだけれど、突き詰められて作られていると感じる。

ギターというより弦の話になってしまったけど、何度見てもライブシーンの楽器の描写は目を見張るものがある。

キャラクターの動き

そして、楽器の描写以上にキャラクターの動きがとんでもないことになっている。

短い動作のループや同じ映像の使いまわしを極力避け、手書きで全員を同時に動かし続ける作画。どれだけのコストがかかっているのか想像もつかない。

コードを抑えたりフレーズをなぞったりと左手はせわしなく指板の上を動き回る。ぼっちちゃんのキレのある右腕のストロークも、手首の動きが非常に滑らかで良い。その一方で、まだ初心者の喜多は手首が固く腕全体を使った弾き方をしている。こういう描き分けが明確にされているのもかなり珍しい。

上の画像のように特定のキャラクターに焦点を当てていないカットでも、動きに全く違和感がない。モーションキャプチャで集めた素材があるとはいえ、手書きでここまで安定した演奏シーンを描写できる時代なのか……という感じ。ハルヒの God knows や『Angel Beat!』のガルデモのライブシーンなども凄まじかったが、それらを凌駕する衝撃を受けた。

ところで、こういうシーンを見ると左手の運指は合っているのかな~と気になってしまう。ほとんどのアニメ作品では、演奏シーンで音と指の動きが合っていない。なんなら左手はずっと固定されていることもある。作画コストを鑑みればそれは仕方ない。でもぼざろなら合っているかも。。

……合ってそう。たぶん。

CloverWorks が昨年制作していた『明日ちゃんのセーラー服』の最終話で、江利花がバイオリンを弾くシーンも運指と音が合っていたなぁと思い出す。こんな映像をテレビアニメで視聴できる時代に生きていて良かった。いや本当に。

印象的なカット

第5話

ギターヘッドから奏者を見上げたワンカット。天才的カメラ位置。ツイッターでけっこう話題になっていたシーンだが、これを見た瞬間思ったことがある。

 

「平沢じゃん」

 

第9曼荼羅のダイジェスト映像から画像を拝借。なかなかの再現率。平沢進はギターヘッドに小型のカメラをつけてこの映像を撮影していたけど、ぼざろのカットもそういうイメージで作成されたのかもしれない。知らんけど。

第8話

そして8話。5話を見て「ギターから演奏者を見上げたアングルを出すなら、演奏者からギターを見下ろしたところも見たくない?」と思っていた矢先。

これもう CloverWorks 俺のこと好きだろ。解釈一致すぎてリアタイしているときちょっと笑ってしまった。

そしてエンディング。

ウマ娘』2期1話以来の楽曲+黒背景+タイトル演出。そしてタイトル回収。これが最終話だと言われても普通に信じる。

ところで、エンディング直前の虹夏のセリフがとても良かった。ちょっと引用してみます。

でも私確信したんだ!ぼっちちゃんがいたら夢を叶えられるって!

だからこれからもたくさん見せてね。

ぼっちちゃんのロック!ぼっちざろっくを!

冒頭の宣言に反してオタク特有の早口(ですます口調)をするのですが、このセリフ選びはグッときました。

「あなたの音楽を見せてね」という言葉は演奏者にとって最高の賛辞だと思うんです。「上手い!」と言われるのももちろん嬉しいことですが、それは日々の努力の帰結であって、鍛錬の成果が認められたということに過ぎません。『演奏が上手い=その人の音楽が好き』というわけでもないはずです。

でも、虹夏は「後藤ひとりの音楽をこれからもたくさん私に見せてね」と伝えて去っていく。それを聞いたぼっちの顔にゆっくりと光源が差し込み、「はい!」と嬉しそうに答える。この演出は本当に素晴らしいですね。後藤ひとりが進もうとしている道に虹夏が光を照らしてくれたんだなと感じました。

1話では、ぼっちの奇行に「(演奏を)頼む相手間違えたか?」と虹夏が困惑するシーンがあります。そんなぼっちの繰り出した全力の演奏が、「この人と一緒にいると何でもできちゃいそうだな / なんか凄いこと起こせそうだな」と虹夏に感じさせるという対比。そして、そんな思いを人に抱かせることができる後藤ひとりの実力。そこから特殊 ED のタイトル回収が来るのはずるいよね。

その他

ライブシーンに限った話ではないけど、特徴的だなと思ったのが背景。

これどうやって作ってるんでしょう。徹底的にロケハンした素材が元になっているのはわかるが、手書きと 3DCG と実写ぽい背景が混ざっており、どうなっているのかよくわからない。

これは普通に手書きに見えるけど

これは CG ぽいし

ところどころリアルすぎて実写の加工と見分けがつかない。というか実写の加工なのかもしれない。『響け!ユーフォニアム!』なども同様の背景を採用していたが、ぼざろの方がよりリアルな雰囲気。どうなっているのか誰か教えてください。

最終話

そして12月25日午前0時。最終話放送。

今まで最低30秒はあった Web 予告がわずか12秒。映像どころか BGM さえ使われていない。攻めてますね~。

アバンも OP もなく、『ふわふわ時間』を彷彿とさせる勢いのある演奏が開始される。5話や8話で演奏していた曲より大衆的な雰囲気。学園祭だものね。

冒頭の手拍子。これが手書きという事実に震える。

ライブシーンも安定のクオリティ。ぼっちが俯きながらも笑顔で演奏しているのが良い。

喜多は可愛い。なんというか、ぼっちと喜多が楽しそうに演奏しているというだけでこみ上げてくるものがある。

モブがライブを見ようと体育館へと駆けつけるシーン。『坂道のアポロン』の文化祭セッションのシーンが脳裏によぎる。結束バンドの皆が青春しているのは間違いないけど、聴衆もまた青春している側の人間なんだよね。

ラスサビに入ると、しばらく校舎の様子が映されるカットが続く。今まで当たり前のように映されてきた場所が走馬灯のように駆け巡っていき、最終回なんだなぁと思い知らされる。

そして、ギターのネックを見つめていた喜多が一瞬だけぼっちに視線を向ける。あまりにも繊細な演出すぎませんか?

こんな演奏を見せられたら、聞いている側もこんな顔になるよね。ところでこの茶髪のヒロイン、ユーフォの黄前久美子に見える。

そして2曲目。喜多の上達具合が凄まじい。ストロークが格段に滑らかになり、表情も豊か。何より、5話ではぼっちの覚醒に気づく余裕さえなかった喜多が、8話でぼっちの演奏能力の高さを認識し、12話ではアドリブでぼっちをサポートするまでに成長したというのも素敵。裏でどれだけ練習したんだろう。

そして、喜多のアドリブでのバッキングから続くぼっちちゃんのギターソロ。土壇場でこれを思いついてやりのけてしまう天才ギタリスト。ライブで起きるトラブルを、それを二度はできないような方法で乗り切るのはアツい。

そうこうしているうちに最終話はあっという間に終わってしまった。なんか結局感想を書くだけみたいになっちゃったけどヨシ。

そんなこんなまとめ

後藤ひとりがかっこいい。滅茶苦茶かっこいい。

1話から面白いなとは思っていたけど、それはどちらかというとギャグ路線の話で、『けいおん!』に近いイメージで見ていた。それが5話でいきなり平手打ちされ、8話で往復ビンタされたような感覚だった。随所にわたる丁寧な表現と描写に制作陣の本気が垣間見えるのはもちろんだが、まさかこんな凄い映像を見ることになるとは思ってもみなかった。

それも単純に「作画がすごい!」ということではなく、原作の4コマ漫画から最大限に話を引きだす構成、一瞬で印象に残す斬新な演出、そして音響の細部に至るまでもが精巧に作りこまれているところが大きい。テレビアニメでここまで徹底的にこだわり抜いた作品が見られるのはとても幸せなことだと思う。

今期は他にも素敵な作品がたくさんあり、帰宅後の楽しみが多いクールだった。それでも、ぼっち・ざ・ろっく!が放送される日曜日の深夜0時が一番の楽しみだった。どれだけ時間がかかっても、是非2期を制作して欲しい。そして、そのために私たちができることはコンテンツにお金を出すことなので

とりあえず原作と結束バンドの CD を買った。

あと、全然関係ないけど、結束バンドがフジロックに出演している二次創作はないかと探したけどなかった。White Stage のトリとかで出ていて欲しい。そしてぼっちちゃんには客席など一瞥もせず延々とえげつないフレーズを弾いていて欲しい。

それでは。